原体験コラム一覧
科学実験データ一覧

捨て犬の文化  愛犬を大切にするこころ?

捨て犬の文化  愛犬を大切にするこころ?

 1950年頃、帰国の決まった留学生が、可愛がっていた犬の引き取り手がないかを尋ね歩き、いよいよ引き取り手がないとわかると安楽死を希望しました。同じ立場なら当時の日本人は犬を捨てたでしょう。捨てることは「誰かが拾ってくれる」という思いからの行為です。実際は拾われる確率は非常に低く、愛犬が命を繋ぐ保証はどこにもありません。留学生は、助かる見込みがほとんどないにも関わらず、その低い確率にかける日本人の行いを批判しました。彼にすれば愛犬が飢えて衰え、長く苦しむことがわかったまま放置することは非人道的な行為と考えるからです。

 南極の越冬隊が帰国時に同行できない犬たちを現地に置き去りにした話はあまりに有名です。樺太犬の太郎と次郎が奇跡的に生き延びた実話は感動的な映画にもなりました。以前は、日本人特有の感情のように思われましたが、近年、アメリカ映画としてリメイクもされました。愛犬との別れにあたり、「生」につながる捨て犬を選ぶか「死」に間違いない「安楽死」を希望するか、両者は一見、対極にある行為です。けれども、その根底に流れるこころ、愛犬を大切にするこころは同じものかもしれません。

前のページへ戻る