原体験コラム一覧
科学実験データ一覧

ヒトは光合成生物になれるか  えっ?そんなことができるの?

ヒトは光合成生物になれるか  えっ?そんなことができるの?

 ヒトが植物のように光合成を行えば、食べる必要が無くなり、究極の省エネルギーになります。SF小説にはこのテーマで書かれたものもありますが、実際にできるかどうかを考えてみましょう。

 光合成をしている植物は細胞の中に葉緑体を持っています。光合成は葉緑体の中だけで行われています。光合成の過程は水の分解と二酸化炭素の還元です。光のエネルギーを捕まえ、有機物(化学結合エネルギー)に変換する反応です。高いエネルギーを扱うことは非常に危険なことで、光合成色素がその役割を果たしています。光合成色素に光が当たると危険な状態になりますが、葉緑体中だけで反応が起こり、他の部分に危険が及ばないしくみになっています。しかし、光合成色素が葉緑体外に存在していると危険な状態が作られます。

 動物の細胞が光合成をするためには、葉緑体を細胞に共生させる必要があります。脊椎動物で細胞中に葉緑体が共生しているものはありません。サンゴ(固着性の刺胞動物)やシャコ貝(固着性の軟体動物)には単細胞の藻類が共生し、光の当たる部分の組織に入っています。ここで光合成を行い、有機物を宿主動物に供給しています。共生の例として有名です。

 動物は有機物を取り入れる効率が高ければ、面倒で危険な光合成を行う必要がありません。葉緑体の共生も必要ないと考えられます。ヒトは食料を効率よく手に入れる方法を獲得しているので、光合成を行う生物になることはあり得ません。

前のページへ戻る