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カブトムシのオスの蛹化は,びっくりの玉手箱!

  • カブトムシのオスの蛹化は,びっくりの玉手箱!

材料

カブトムシの終齢幼虫 新・人工蛹室

内容

・カブトムシが蛹化する様子を観察する。
・人工蛹室に前蛹幼虫を入れ,蛹化のときを待つ。
・オスの蛹化には驚くべき動きがあることが分かる。

詳細

カブトムシの幼虫が蛹になることを蛹化と言います。その前に終齢幼虫は,蛹になるための部屋=蛹室を自力で作ります。蛹室は鶏卵を引き伸ばしたような形で,十分な広さがあります。前蛹状態の幼虫が,体をよじって最後の脱皮をするためのスペースです。 蛹室を暴いて中を覗いてみると,まるで土壁のように壁が塗り固めてあります。唾液のようなものをマットと混ぜ,体を使って擦り付けているのかと思いきや,何と糞で塗り固めているそうです。なるほどと感心させられました。 その頃の幼虫は,まだ白っぽくプリプリしています。蛹室で落ちついてしばらくすると体は少しずつ小さくなり,体色が茶色がかってきます。足はレの字のようになり,自由に動かすことができなくなります。 さらに日にちが経つと体色の茶色は濃くなり,背中に()を縦にしたような模様が4対浮かび上がってきます。特に上の1対は,濃く太くなります。この模様は,皮ではなく体表についています。同じ頃,一番上の模様より頭側の体色だけが,明るい薄茶色になってきます。 やがて皮がシワシワ・クタクタになったら,蛹化直前です。体をゆっくり直立させたかと思うと,今度はゆっくり前に屈曲します。 それを何度か繰り返すうちに中の体と皮とがずれ始め,背中がパックリ割れて蛹の白い背中が顔を出します。体を曲げたり伸ばしたりすることで,皮はどんどん脱げていきます。 こげ茶色の頭の部分の皮が脱げたら,体をグリングリンと横方向によじりながら,皮を脱ぎ下げていきます。 以上が,新・人工蛹室に入れることで観察できる,オス・メス共通の蛹化の過程です。 オスの蛹化には,まだまだ驚きの秘密があります。人目に付かない暗い蛹室の中で行われている最大の秘密は,あの立派な大角が,最初はしょぼらんと『斜め下を向いた短いもの』だということです。國眼厚志さんからこの情報を得てから3年,やっとその瞬間を撮影することができました。 背中が割れるまではメスと同じですが,頭の部分の皮を脱ぐのに時間がかかります。そこに,伸展前の角が引っかかるからです。 やっとのことで姿を見せた大角?は短く,クニッと下を向いています。これが立派な大角に伸展するのですから驚きです。体を前後にグングンと屈曲させることで体液を送り込み,角が少しずつ伸びて行きます。時間をかけて,斜め下向きから真横に,斜め上にと角度を変えていきます。 もう1つの驚きは,大角を伸ばすために2種類の反動をつけることです。1つ目は,何と斜め下向きの角を壁にグッと押し付けるのです。薄皮の中に液状物が詰まった柔らかい角をです。当然角は,グニッと折れ曲ります。しばらくその体勢を維持したのち,急にポンと体を離して勢いをつけることで,角を伸ばすのです。「押し曲げ大角伸ばし」と名付けました。これを何度も何度も繰り返します。もし蛹室の壁に突起物があれば,皮が破れて蛹化失敗となるでしょう。そんな心配など微塵も感じさせないダイナミックの動きに,プチ感動です。 角が斜め上を向いて太く長くなってくると,2つめの反動をつけ始めます。ゆっくりと腹部を抱えこむように体を屈曲させておいて,やおらグン!と体を真直ぐに反らします。これを,時間を置いて何度も繰り返します。これには「腹筋大角伸ばし」と名付けました。 このようにして1時間以上の時間をかけ,オスの蛹化が完了しました。 最初の体色は美しい乳白色ですが,翌日には黄褐色に,さらに時間が経つと茶褐色へと体色が変化し,やがて羽化の時を迎えます。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
生物 生態 探究心 876
夏
室内;
室内
難しい
普通
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