原体験コラム集

99、「左脳と右脳」

 人間の脳には左右対称の左脳と右脳があります。左脳は言葉、右脳はリズムや空間把握というように機能を分担していることが知られています。けれども、突き詰めて考えると分からないことがたくさん出てきます。例えば、音楽と絵画は右脳がより深く関わっていますが、言葉を文字にした漢字はどうでしょう。漢字は表意文字ですから、文字自体の認識は(絵画を見るように)右脳も深く関わっていることになります。それでは表音文字を用いている欧米人は、文字を認識するとき脳の使い方が私たちとは違うのでしょうか。日本人が心地の良い音として聞く虫の音を、欧米人は雑音と感じるそうですが、これと関連があるのかもしれません。

 言葉は左脳で知覚すると言ってしまうと、やはり疑問が残ります。言葉の意味は左脳で捉えますが、発声のリズムは右脳が担当します。子どもが童謡を覚えるのは右脳で認識しているので歌詞の意味は理解していないようです。童謡に限らず、「論語」や「奥の細道」などの古文、現代文でも韻をふんでいる文章や七五調の「島崎藤村」の詩など、意味を考えずに暗唱するときは、右脳で覚えていることになります。

 脳の機能は、左右の脳の対称となる部分を同時に使うと考えられています。ですから歌をうたっている場合、リズムの認識には右脳、言葉の理解には左脳の同じ部位が働きます。ところが、私たちが日常会話に用いる言葉は左脳だけを働かせ、右脳の該当する部分は使っていません。脳に損傷があり、言葉の意味は分かっていても言葉がしゃべれない症例は珍しいものではありません。言葉を認識する脳の機能は健全でも、その言葉を発声する機能が壊れると言葉が出ないということでしょう。脳の機能は複雑に絡んでいて、右脳・左脳の分担とそれらを繋ぐ神経である脳梁のはたらきなど、まだまだ解読できていないことばかりのようです


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