理科教育における原体験
「原体験だより」宮下繁編より
前述のように、原体験が豊富であると将来いろいろなことを理解したり判断したりする上での選択肢が結果的に多くなる。そのような側面から考えると、自然物を対象としたものだけでなく身近な科学・技術の産物を対象とした体験も、科学原体験としてとらえることができる。この場合も、教育的意図はなく、多くの科学・技術に関する体験をすることによって感性が育成され、結果的に理科的な内容に興味をもち、また理解が深まっていくのである。理科教育において実験・観察が重要であることはいうまでもないが、それは知識としてではなく体験を通してこそ深い理解につながるからである。何事においても、やってみて初めてわかったり実感したりすることはよくあることである。理科教育においても体験を通して、特に触・臭・味などを含む五官をつかって体験すると、より強く記憶に残るのである。そして、授業などで抽象化された内容を習ったときに、強く記憶に残った現象を思い出して授業の内容と結びつけ、初めて深く理解できるのである。このように、本来の意味での原体験は乳幼児期におけるものであるが、その重要性は理科教育における実験・観察の重要性と共通のものであり、原体験の重要性を理解することは五官を使った実験・観察の重要性を理解することにつながるのである。