自然の形と知恵シリーズ

90. 竹と日本人の暮らし

 万葉集の第一巻の最初に「こもよみ籠持ちふくしもよみぶくし持ちこの岡に菜摘ます児・・・」とあります。竹のかごを持ち、竹べらを手にして野の草を摘んでいるのどかな情景が浮かびます。

 古くから用いられる家紋にも竹があしらわれたものが見られます。竹に雀、三つ竹、輪違いなどが、その例です。また、門松や七夕飾りに竹が欠かせないことは子どもでも知っています。さらに、季節感や風情のあるようすを表すのに、竹に重ねた多くの言葉があります。例えば「竹の秋」「竹の落ち葉」「竹のしぐれ」「竹の煙」「竹の嵐」「竹の台(うてな)」「竹の下道」などが、よく知られています。

 竹瀝(ちくれき)と呼ばれる竹の油を始め、多くの竹製品も日常の暮らしに数多く利用されています。竹瀝は、節を抜いた生の淡竹(はちく)を火であぶり、切り口から出た液を集めたものです。生のショウガとともに喘息・肺炎などの民間薬として用いられます。咳止め、解熱に利くので、“やぶ医者は竹の油が極意なり”という川柳にも詠まれました。

 その他にも慣用句として、竹のおき(火もちせずすぐに消えることから、すぐ忘れるの意味)、竹の先に鈴をつけたよう(少しの風でも揺れて音を立てることから、おしゃべりという意味)などがあげられます。日本人の生活に、どれほど竹が密接に関わってきたかが分かるでしょう。

写真はマダケ


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