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日本人の自然観2  自らの気づきでなく教えられた自然観?

日本人の自然観2  自らの気づきでなく教えられた自然観?

 池坊学院という華道の大学で、花材植物学という講義を担当していたことがあります。

 その頃の私の率直な印象は、華道の自然を生かすという精神とその手法が科学的で理に適っているというものでした。そこでは、生け花を自然の面影や雄大な景色の表現として捉えているために、花材を天と地と人などに置き換えて花の配置を決めていきます。生け花の真意が、地球上の生物が受ける重力の影響を見極め、その方向性を考えて生かすことにあり、だからこそ生け花(生きた花・生かす花)ということなのです。茎や葉だけでなく、花自体にも天地があることを意識し、花が咲いている状態をそのまま生け花に表現しています。例えば、杜若(カキツバタ)と花菖蒲は、とてもよく似ていますが、カキツバタは葉先を花の上に出したり曲げたりして生け、花菖蒲は花を葉より上部に生けることで自然の姿での両者の違いをきちんと再現しています。ただ、これは流儀として形で伝授されるものです。ですから、華道をはじめ茶道や文芸などが持つ日本人の自然観とされるものは、自らの気づきの上に成り立つものではなく、教えられたものが結果的に鮮明なイメージとなった自然観かもしれません。

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