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教科書の記載が変わるとき

教科書の記載が変わるとき

 国語の教科書は毎回、説明文や物語が変わり、教科書改訂ごとに大きく内容が変わるため、担当者は常にそのつもりでいますし、教科書会社によって扱う作品も大きく違います。社会科の教科書は法律や地名がよく変わりますから、これも常に対処するつもりでいることでしょう。それに対して理科は担当者にとってあまりその心づもりができていない教科かもしれません。科学の真理が数年でそう大きく変化することはないので、例えば数十年前の教科書でも、大人たちが学習してきた内容と比べ、我が子の教科書の記載が違っていることはそうありません。

 ところが「冥王星、準惑星に格下げ」の件は確実に記載内容が変わります。あいまいだった惑星の定義を今回きちんとしたことにより、その分類から外れてしまったのです。これは真理が変わったと言うより見方(定義)が変わったと言うべきでしょう。

 「地球の年齢」も以前とは変わりました。数十年前は地球は45億年前に宇宙のチリやガスが集まってできた…などと記載されていましたが、これは今のどの教科書を見ても「46億年前」。地球が急に歳をとった原因は放射性元素の半減期を測定する精度の問題でしょう。

 「空気中の二酸化炭素の割合」も変わりました。ずっと酸素21%、窒素78%で残り1%が「その他の気体」で水素、アルゴン、二酸化炭素などが含まれていると学習します。「その他」の中でも二酸化炭素だけは「0.03%」と小数第2位まできちんと覚えている人も多いでしょう。この「0.03%」がどうやら怪しくなりました。測定を始めた20世紀初頭は0.027%だったと言います。四捨五入して0.03%なので記憶通りです。ところが化石燃料の燃焼で二酸化炭素の割合は増加し、0.038%程度に膨らみました。これはもはや「0.04%」なのです。教科書に記載されてから初めて二酸化炭素濃度をいじることになります。「わずか0.01で」と思っても増加率は33%。見方でも精度でもなく「事実が変わった」ことに他なりません。

 g重、kg重という表記が消え、すべて力の単位は「N(ニュートン)」に統一されました。圧力もkg重/c ではなく、P(パスカル)です。ところがN(ニュートン)はMKS単位系(m、kg、秒)なので問題にcmが使えません。使ってもいいのですが5cm→0.05mと変換します。

 多くの人が「昔は○○と習った」などと言いますが、子どもも親も学習内容を共有できるよう、「以前、こう教えられていた」などの記載がコラム的にでもあれば楽しい文化の伝承が行われるのではないかと思います。

*後生(こうせい=あとから生まれる人)ここでは後生(ごしょう)と読んではいけません。念のため。

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