昔話や童話に登場する人物や動物、植物などを比較すると、自然観の違いが見えてきます。
西欧の物語は「白鳥の王子」の白鳥をはじめ、その他の物語に登場するヘビやガマも、王子や王女など人間が魔法で動物に変えられたものです。変化した動物は仮の姿で、魔法が解けると再び元の人間の姿に戻るというストーリーです。ところが、日本の民話、伝説、童話では、「夕鶴」に代表される鶴のように、動物が人間に姿を変えています。鶴は若い女性に姿を変えましたが、美しい姫に懸想したヘビが若者に変化することもあります。また、狐が若い女性になり、思いを寄せた若者との間に子どもを成す物語もあります。いずれも、元は動物であったものが人間に姿を変え、やがてまた動物の姿に戻るという展開です。さらに、柳の木が人間の姿になって根元に捨てられた赤子を育てるという話もあり、動物も植物も人間も変幻自在。ときには「かちかち山」の狸のように人間を騙しておばあさんの肉を食べさせてしまう共食い(cannibalism=カニバリズム)まで登場します。これらの物語には、人間も動物も植物も一体化して垣根がありません。これは欧米では見られない自然観です。