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うっかりものの大手柄(イチジクコバチ)

うっかりものの大手柄(イチジクコバチ)

 リビングの窓から一本のイチジクの木が見えます。2mほどの小さな木ですが、例年たわわに実り、8月下旬から10月まで、毎日数十個のボルドー色のギフトをくれます。  イチジクの花は内側に咲くので、外からは見えません。成長し完熟すると、お尻の部分(花頂部)が割れてきます。そこから見える数えきれない粒々の一つ一つが花です。それぞれの花が、硬い皮を持った実となります。イチジクを食べたときのプチプチ食感は、このためです。  あれっ?!花が内側に咲くなら、受粉はどうするの?ですよね?イチジクは、イチジクコバチという専属の運び屋さんのお世話になります。メスのイチジクコバチは、イチジクの雄花のお尻の細い細い通路から中に入ります。この通路はあまりにも細いので、なんと、途中で羽も触角も折れてしまいます。産卵後は中で死ぬよりほかありません。卵からは、オス・メス両方のイチジクコバチが生まれます。オスには羽がありません。メスと交尾し、その後、外に抜け出るトンネルをメスのために掘り、ジ・エンド。メスはトンネルを通って花粉と共に脱出、そして、また、雄花に入って産卵します。このとき、雄花でなく間違って雌花に入ってしまう、うっかりもののイチジクコバチもいます。雌花には卵を生むスペースが無く、何もできないまま中で死んでしまいます。お気の毒ですが、このミスこそが大手柄。花粉が雌花に運ばれて授粉完了、イチジクの実ができるのですから。 ❇︎「死んだハチごと、イチジクを食べてるの?」と心配になったあなた、大丈夫です。日本で栽培されているイチジクは、品種改良でイチジクコバチ無しで結実する品種ばかりです。ご安心を!     Ane

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