10年前に私が在職していた大学の研究室のロッカーから、その当時、私の講義を受けていた200名余りの大学院生のレポートが出てきました。「自然と文化」という講義でしたが、「自分の心に残る原風景、原体験」というテーマで提出してもらったものです。 これをみると、ザリガニ釣り、魚取り、カブトムシやチョウなどの昆虫採集、日の出や日の入り・山・海・雪などのふるさとの情景、正月のとんどや秋祭りなどの行事に関するもの、凧上げ.そり・ベーゴマなどの遊びなどが大半を占めていました。これらは、いずれもすぐに役立つようなものではありません。 また、私たちが日常の暮らしで、趣味としているもの、例えば絵を描いたり音楽を聴いたり楽器を演奏したりというものも、他人から見ると無駄に見えるものです。けれども、原風景・原体験や自分の琴線に触れたり感動したりしたものは、いつまでも、その人の心に残るものです。そして、この一見無駄に思えることこそが、実は生きる原動力になり、言い換えれば生きがいに成り得るものなのです。