原体験コラム一覧
科学実験データ一覧

生物学の視点での子育て10 労働の大切さ

生物学の視点での子育て10 労働の大切さ

 昔の生活には今のように便利な道具もなく、猫の手も借りたいほど家庭内に仕事が溢れていました。そのため、子どもといえども家族の一員としての役割がきちんと割り振られ、それらの仕事を果たすことで、子どもたちはさまざまな能力を自然と身につけることができました。  子守や食事の用意、掃除、洗濯、柴刈り、薪割りなどの家事労働をはじめ、農家なら農作業、商家なら配達など家業の手伝いも当たり前でした。こういうお手伝いは、遊びを我慢して成り立つものですから辛いこともありました。けれども、自分のできるお手伝いが暮らしの役に立つことを目の当たりにもしますから、喜びもあることでした。さらに、これらの労働は、あくまで子どもにできる範囲ですから、それを超える労働を担う大人への尊敬や憧れの念も養いました。現在の子どもは、昔の子どもがお手伝いに割いた時間のほとんどを塾や習い事に費やします。時間的な拘束という意味では、昔の子どもと同じかもしれません。大きな違いは、今の子どもの拘束時間が、子ども自身のためだけに使われているにもかかわらず、本人の喜びにつながりにくいという点でしょう。  社会のあり方そのものが変化し、それに伴う子どもたちの暮らしも変わることは当たり前ですが、どの時代にも「汗水たらして働く」という体験は必要です。理屈ではありません。汗水たらすためには手を抜かず懸命に体を動かさなければなりません。その結果、汗水に見合うだけの達成感を味わうことができるのです。やはり、子どもにこそ労働の体験を、できれば家庭での日常にさせたいものです。

前のページへ戻る