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生物学の視点での子育て11 放たれる矢

生物学の視点での子育て11 放たれる矢

 有名なカール・ギブランの詩に「あなたの子はあなたの体を通して生まれてきたが、あなたの子ではない・・・・・あなたは弓であり、子はそれにつがえられた矢である」といった意味の詩があります。  残念ながら、子どもの安全を願うあまり、矢を放つことができない親、あるいはひもをつけたままで矢を放つ教師があまりにも多いような気がします。放たれない矢は飛ぶことができず、ひもをつけた矢はいつまでたっても親や教師を越すことはできません。親や教師は、できるだけ安全な方向に向け矢をつがえ、力いっぱいに弦を引いて放してやる勇気が大切です。  動物の親と子の関係については、すでに別のコラムでも述べていますが、動物の子育ては巣立ちまで、成獣になるまでと限られており、子別れの時期がはっきりしています。それまでは全力で面倒を見ますが、子どもが一人前になったあとは関わりを絶つ動物がほとんどです。生物学的な視点で見たとき、動物は親に面倒を見てもらうことはあっても、子が親の面倒を見ることはありません。ゾウやサル、チンパンジーなどの動物では、仲間として血縁関係のあるものが群れて暮らすことが知られていますが、たいていの動物には人間の家族のような関係は存在しません。人間の親子関係のすべてを動物に置き換えることは無理ですが、やはり、親は子どもが自立したあとは面倒を掛けないくらいの心意気を持ちたいものです。カール・ギブランの詩の伝えるところを肝に銘じて。

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