LEDライト,ストロボライト,デジカメ
・春先から鳴いている昆虫の正体を調べる。
・夜の道端などで,ジーという鳴き声をたどる。
・鳴き声の主が,成虫越冬したクビキリギスだと分かる。
春先から,夜になるとうるさいぐらいのジーーーーという大きな鳴き声が響き渡ることがあります。鳴き声の主を探すため,足音を忍ばせて近づこうとします。しかし,どこから鳴き声が聞こえてくるのか,特定することは意外に難しいのです。2mほど先だと思っていても,実際は90°も違う方向で20mも先だったりします。木の上?草の上?もしかして地面の下? 鳴かないミミズが鳴いているなどと,間違った解釈の元になっているのかもしれません。慣れると,鳴き声の大きさでおよその位置が分かるようになります。さらに,目と鼻の先になると,ジーーーに混じってビーーーーという音も聞こえてきます。後者は,周囲の葉などが振動している音だと思うのですが,定かではありません。最終的に鳴き声の主を見つけても,そこから音が発生していると認識できないのが何とも不思議です。 鳴き声の主はクビキリギスです。キリギリスは夏に鳴く昆虫ですし,他の鳴く虫であるスズムシやマツムシ,カンタンやコオロギは秋の虫です。しかも,冬前には卵を産んで死んでしまいます。ということで,クビキリギスはバッタの仲間ではめずらしい,成虫越冬する種です。そのため春先から鳴き始め,5〜6月頃に産卵します。 体色は薄緑色か薄茶色が多いのですが,たまにピンクの個体が見つかり「ピンクバッタ」と話題になることがあります。上から見るとシャープに尖った頭部が特徴的ですが,裏を返すと,いかにも強力そうな大あごと口の周りの赤色にドキッとします。まるで吸血したばかりのようで,「血吸いバッタ」という異名をもつのもうなずけます。また,首の部分が弱いので,噛み付かれて体を引っ張ると,頭部だけ残してちぎれてしまうそうです。その生首状態が,クビキリギスの名前の由来です。 鳴く虫の多くは,前翅の発音器を擦り合わせて鳴きます。クビキリギスも同じですが,見た目には翅を震わせている様子がよく分かりません。動画に撮ると前翅の付け根のあたりがぼやけているので,震わせているのかなと思えます。どれほど高速に翅を振動させているかというと,120FPSのスローで撮っても,わずかに前翅の付け根のあたりが動いているのが分かる程度です。 そこで,光源をLEDからストロボライトに替えてみました。電源を車から取るのが大変ですが。点滅間隔を調整して照らします。動画に撮るとコマ落ちで見にくいですが,肉眼だと前翅がゆっくりと波打つように動いていることが分かります。地面に置いた縄の片方の端を持ってすばやく振ると,縄が蛇のように波打ちます。同じような動きを高速で行っているのでしょう。無骨で耳障りな鳴き声とは裏腹に,実に優雅な舞を見ているようで感動します。 見つけるのは難しいですが,観察しやすい昆虫です。ヨモギなど足場の良い植物の上で鳴いていることが多いようです。音を立てないように近づきます。夜行性で正の走光性があるので,見つけて観察する際,ライトで照らしても逃げ出すことはありません。しばらく照らしていると,もっと照らしてと言わんばかりに開けたところに出てくることがあります。 飼育する場合は,飼育ケースを縦置きにします。イネ科の植物をビンなどに挿して餌とすると,長く飼育することができます。 関連実験(あわせて、こちらもどうぞ) コオロギは温度計
生物 | 音 生態 | 探究心 | 797 | 春夏
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野原; |
難しい
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少し危険
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