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月の裏側が見えないのは なぜ?

  • 月の裏側が見えないのは なぜ?

材料

3Dプリンター フィラメント ナット 超強力両面テープ 塗料(ダークグレイ) ホットナイフ ホットボンド COB・LEDライト(100円ショップ)

内容

・月の裏側が見えないのはなぜか考える。
・3Dプリンターで,月モデル(起き上がり小法師タイプ)を作って動かす。
・月の重心が偏っているため,比較的重い表側を,常に地球の方に向けていることが分かる。

詳細

小学4年生では,月が日周運動をしているように見えること,6年生では,月が地球の周りを公転していて,月と太陽の位置関係の変化によって月齢変化が起こること,新月から約29.5日で新月に戻ることなどを学びます。 その際,月の模様にも触れ,国によって捉え方が違うことを知らせています。これはすでに,No.869「月の模様の見え方が,国によって違う理由を調べよう」にアップしてあります。 月は自転しながら地球の周りを公転していますが,常に「ウサギ模様」の表側を地球に向けていて,裏側が見えません。子ども達は意識していませんが,なぜだろうと投げかけると,どうも偶然ではなさそうだと考え始めます。 私が,月モデルを持って子ども達(地球)の周りを回って見せます。そうすると,多くの子ども達は,もし月が自転していなければ,裏が見えることがありそうだと気づきます。稀に,自転と公転が同じタイミング?になるから,ずっと表を向けてるんだと考える子どもがいます。 ということは,月の自転と公転の周期が同じだということで,これは偶然なのかな,それとも何か理由があるのかなと問い重ねます。すると,偶然じゃないだろうという意見が多いのですが,理由が分かりません。 理由については「潮汐力による変形説」や「起き上がり小法師説」などがあります。私は「起き上がり小法師」を見せて,月の重心が中心からずれて,地球側に少し偏っているからだと説明しています。 「起き上がり小法師」の底には錘が入っています。そのため,いくら倒しても,揺れながら底を下にして起き上がるおもちゃです。 月も同じで,地球の引力に引っ張られて,重い方を地球の方に向けることで安定しています。 この説は,月の表側に黒っぽい「海」が多い(約30%)こと,裏側には「海」が少なく(約2%)「クレーター」が多いことの説明にもなります。 どういうことかと言うと,地球側になる方に重心が偏っていて,しかも地球側の地殻の厚さが薄いとします。この条件下では,裏側に隕石が落下しても,クレーターができるだけです。でも,地殻の薄い表側に隕石が落下すると衝撃がマントルにまで達し,黒っぽい玄武岩が吹き出します。それが表面に広がって「海」を形作りました。このように説明できそうです。 また月は宇宙規模の「起き上がり小法師」として,公転している間も常に,重心が偏っている表側を地球に向けて,引っ張り合っていることになります。これは,少し秤動(ひょうどう:首振り運動)していることの説明になるかもしれません。 これまでは絵図で説明していました。さらに理解を深めさせようと,3Dプリンターで月モデルを作ることにしました。ただ,導入する費用がネックでした。知人が,フィラメントを含めて2万円ほど(当時)の機種「TRONXY XY-2 PRO」を紹介してくれました。私は全くの素人でしたが,Youtubeを見れば,組み立てから導入・プリント(印刷)まで丁寧に教えてもらえます。 自分でデータを作る力はないので,「High Detailed Moon Lamp」https://www.thingiverse.com/thing:2955930 でDLできる月モデルのデータファイルの中から「moonLamp5inches.stl」を使わせてもらいました。 スライサーはCuraを使いました。Curaの使い方なども,Youtubeで教えてもらえます。 ノズルから,極細の溶けたフィラメントが出てきて形を作っていきます。設定に問題があるのか,いわゆる「糸引き」がひどいです。5inchモデルのプリント終了まで,所要時間は何と21時間半。NASAのデータによるクレーターの凸凹がしっかり再現されています。 シートから剥がし,底面のビルドプレートとサポート部分を取り外します。 ライトアップすると,クレーターだけでなく,部分的に厚みを変えることで「海」の模様が浮かび上がりました。 「ウサギ模様」をはっきりさせるために,塗料(ダークグレー)で着色しました。 「ウサギ模様」と反対側をホットナイフで少しカットして,穴を開けます。錘にするナットに,超強力両面テープを貼り,穴から入れて,模様の裏側に固定します。 ホットボンドを使い,カットしていた部分で穴を塞いで完成です。 机上で揺らして見せてから,持ち上げてほら! いくら揺らしても「ウサギ模様」が下にある。つまり,地球の方を向いている。ガラスの上で揺らし,下から撮って見せてもいいでしょう。 「理科はものと体験で勝負!」 手間はかかりましたが,2Dよりも3Dを動かした方が,理解が確かなものになるなと感じています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
地学 天文 月と地球 探究心 921 春夏秋冬
春夏秋冬
室内;
室内
普通
普通
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