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ものが燃えるときの 重さの変化を調べよう

  • ものが燃えるときの 重さの変化を調べよう

材料

A4コピー用紙 スチールウール アルマイトのパン皿 シリコン鍋敷き 電子天秤 集気瓶 蓋 ロウソク 燃焼さじ

内容

・紙と鉄の,燃焼による重量変化を調べる。
・電子天秤上で燃焼させ,リアルタイムに重量変化の違いを比べる。
・燃焼に伴って,重量が減る場合と増える場合があることが分かる。

詳細

小学6年生の理科に「燃焼」の単元があります。蓋をした集気瓶の中でロウソクを燃やすと,しばらくして火が消えます。 その時,瓶の内側が,うっすらと白く曇ります。白く曇るといえば,4年生で学んだ「結露」が思い出されます。 しかし,結露は,水蒸気が冷やされてできるものだと学んでいます。今回は火を使った実験なので,冷たくなることはありません。 それに,ロウソクは湿っていません。水蒸気が出てくる要素が見当たらないので,子どもたちは理解に苦しみます。 この件は,指導内容に入っていません。しかし,事実として子どもの目に触れる現象です。もっと学習が進んだら分かると、勿体をつけておきます。 単元終わりのおまけとして,2つの燃焼を紹介します。①つ目は,紙の燃焼。②つ目は,鉄(スチールウール)の燃焼です。①と②では,燃焼後の重量変化の様子が違うからです。 その違いを,天秤を使って視覚的に説明する方法が紹介されています。私は,もっとリアルに,刻々と変化する重量を数値で見せるため,電子天秤を使う方法を考案しました。 電子天秤の上で物を燃やすなんて非常識だと思われそうですね。給食のアルマイトのパン皿を,電子天秤の上に置きます。この中で紙などを燃やすと,電子天秤が焦げるかもしれません。そこで,断熱材として,段ボールを間に挟みました。これで,焦げる心配はなくなります。今は,100円ショップの熱に強いシリコン鍋敷きがベストだと思っています。 鍋敷きと皿を載せてから,風袋引き(0設定)をします。A4の紙をクシャクシャ丸めて皿に入れると,重さ4.2g。火をつけると炎が燃え上がり,それに連れて,数値がどんどんと小さくなっていきます。やがて紙が燃え尽きると,重さは0.3g 。これは灰の重さですね。 残念ながら,子どもたちの知識では,重さが大きく減少した理由を説明することはできません。「紙が灰になったから,重さは軽くなる」ことは想像していたでしょうが,その理由を考える機会は,これまでにはありませんでした。 種明かしを先延ばしにして,②スチールウールを燃やしたら,重さは軽くなるかと問います。大半は,紙と同じく軽くなる派です。意外に,重くなる派が少なからずいます。既習かもしれないので,あえて理由は聞かずに実験開始です。 スチールウールを満遍なく燃焼させるためには,固まりを解す必要があります。実はこの行為,とても危険なことなんです。しかし,教科書に,その注意喚起の記述はありません。強い光源で照らすと,細かなほこりのようなものが舞っていることがわかります。このほこり?が曲者です。実はこれ,極細で短い鉄線なんです。言い変えると,小さな小さな針のような物なのです。以前,これが目に刺さった子がいて,眼科で抜いてもらったそうです。夏場に解すと,無数の細かな針が,汗で手につくことになります。その手で首筋の汗を拭うものなら・・・薬を塗っても治らない,チクチクとした痛みが長く続くことになります。 そもそもスチールウールは,頑固な汚れ落としのタワシとして使われるものです。「手でちぎったり繊維を引っ張ると,手を傷つける場合があるのでおやめください。」と,注意書きがあります。本来の使用目的からすると,解すことなど想定されていません。つまり,解す危険性がほとんど認知されていないので,要注意なのです。 解す必要がある場合は,マスク・安全メガネ・手袋を装着し,バケツの中などで,そ〜っと解します。それでも,細かな無数の針が底に落ちているでしょう。それは,ザッと水で流してしまいましょう。 解したスチールウールを皿に載せて,重さを計ります。火をつけると炎は出さず,次々と美しく輝きながら燃え広がっていきます。そして,重量は,多くの予想に反してジワジワ増えていきます。子どもたちから,驚きの声が上がります。最初は6.0gだったのに,燃焼後には6.9g。0.9g増えています。もちろん,6年生には理由が説明できません。 実験後,種明かしとして,化学式を提示します。今やCMで,O2やCO2,H2Oなどを見聞きします。6年生には事前に,原子・分子の学習を軽くしています。その方が,燃焼だけでなく,蒸発・蒸散,呼吸や光合成などの説明がやりやすくなるからです。 紙の燃焼の化学式を提示して,意味を説明します。紙などが燃えると酸素と結びつき,二酸化炭素と水蒸気ができます。つまり,重さが軽くなったのは,気体である二酸化炭素と水蒸気が空気中に出ていくから。その分だけ軽くなったと,説明できる子どもが出てきます。さらに,集気瓶実験で内側が白く曇ったのは,ロウソクの燃焼によって発生した水蒸気が冷たい瓶に冷やされて,小さな小さな水滴になったからだと理解してくれることを期待しています。 では,鉄が燃えて重くなったのは,なぜ?どうして?WHY? と問いながら,化学式を見せます。すると,多くの子どもが,酸素が足し算されているから,酸素の分だけ重くなったんだと理解できたようです。 この実験のねらいは,燃焼による重量変化の違いを,全員が正しく説明できるようになることではありません。何となくこういうことが起こっているんだなと分かれば良いのです。 ただ,燃焼後に,重さが軽くなる場合と重くなる場合があること。そして,集気瓶の内側が曇ったのは,ロウソクが燃焼することで,そこにはなかった水蒸気が発生したからだと理解してくれることを願い,この実践を続けています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
化学 燃焼 探究心 924 春夏秋冬
春夏秋冬
室内;
室内
普通
少し危険
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