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水の沸騰実験における,湯気と水蒸気の理解をサポートする実験

  • 水の沸騰実験における,湯気と水蒸気の理解をサポートする実験

材料

丸底フラスコ フレキシブルスタンド 実験用ガスコンロ 金網 プリンターインク 電気ストーブ 風呂

内容

・湯気と水蒸気の理解をサポートする。
・インク,電気ストーブ,風呂の湯気などを使って実験を行う。
・湯気と水蒸気に関する理解が深まる。

詳細

小学4年生の「水のすがた」という理科の学習で,水を沸騰させる実験があります。丸底フラスコの中の水を加熱すると,湯が沸き立って沸騰します。ボコボコと大きな泡が次から次へと発生し,湯気がさかんに吹き出します。沸騰している間の温度は,約100℃で変わりません。 改めて水を加熱して沸騰させてみました。湯の中で泡が次から次へと発生し,フラスコの口から湯気がモウモウと吹き出します。 ここで,泡の正体は水蒸気だと教えます。フラスコの中も,水蒸気で満たされています。 その後で,水蒸気は水が目に見えない気体になったものであること,水蒸気が周りの空気に冷やされて小さな小さな水の粒になったものが湯気で,液体だから目に見えることを教えます。その湯気は,再び目に見えない水蒸気になり,空気中に出ていくとも教えます。 『キャコピ:泡の正体なんですか?空気じゃなくて水蒸気!』 ①水(湯)に色をつける これらをすんなり受け入れる児童は多いのですが,中には「泡が水蒸気だったら目に見えないはず。湯の中では見えてるよ。じゃあ,水蒸気ではないんじゃない?」と疑問に感じる児童がいます。 そこで,水が沸騰している状態で,丸底フラスコに青い染料を入れてみました。染料は,100円ショップのプリンターインクです。 児童に「インクを入れると,湯や泡,湯気の色は青くなるか」と問います。児童は意外に悩み「みんな青っぽくなる」という予想が少なくありません。 予想を聞いた後でインクを滴下すると,湯が青くなるだけです。フラスコの中は透明で,湯気は白いまま。児童は結果に驚きます。 さらに問い重ねます。「透明だった泡の色は変わった?」「青くなってる!」と答えさせたところで「はじけた泡はフラスコの中にあるはずだね。でも,色はついてないね。」これには児童も同意せざるを得ません。ということは「青く見えていた泡は,本当は透明なんだ。空気と同じで,湯の中にあったから泡として見えていただけ。水蒸気になったから透明になるんだ」と納得してくれそうです。 ②電気ヒーターで,湯気を温める 次に,青くなるという予想があった湯気ですが,インクを入れても白いままです。「水蒸気は,フラスコの口から吹き出すとすぐに周りの空気で冷やされます。すると,目に見えないほど小さな水蒸気の粒がたくさん集まって大きくなり,目に見えるようになります。それを湯気と呼びます。」と,教科書よりも詳しく説明しています。 「じゃあ,周りの空気で冷やされなかったら,湯気にならずに水蒸気のままなの?」という疑問に答えるために,フラスコの口のから上の部分を,電気ストーブで温めてみました。 しばらくすると,モウモウと吹き出していた湯気の姿は,だんだんと薄まってきました。フラスコの口から吹き出した水蒸気は,白い湯気にならないまま空気中に出ていったのです。 試しに団扇で周りの冷たい空気を送り込むと・・・・また白い湯気が見えるようになりました。 ここまででも,4年生の児童には,なかなか難しい学習です。さらに,水蒸気が一旦湯気になり,その後また水蒸気に変わって空気中に出ていくということも理解させなければなりません。 加熱されてエネルギーをもらい,液体の水から気体の水蒸気になります。次に周りの空気で冷やされてエネルギーを失い,水蒸気から水に戻ったのが湯気です。 これは,BB弾と透明ビニール袋を使って,モデル的に説明しています。 なのに,湯気がまた水蒸気になって空気中に出ていくと言われても,困惑する児童がいるでしょう。湯気になった後で加熱されてないし,冷たい空気の中に出ていくのに,なぜ水蒸気になるのだろう。 理解することは不可能でしょう。でも,教科書では理由を説明していません。 湯気で見えている辺りは密度が高いのですが,フラスコの口から離れると,水蒸気の密度は小さくなります。また周りの空気は水蒸気で飽和していないので密度が低くなります。湯気が水蒸気になって入り込める隙間がたくさんあると言うことです。 また,水滴が小さいほどすぐに蒸発しますし,蒸発は室温でも起こる現象です。飽和水蒸気量を頭に置けば,大人なら理解できることでしょうが,4年生にそれを求めるのは無茶な話です。 ③水蒸気の飽和度を増す 逆転の発想で,実験セットの周りの水蒸気量を飽和させるとどうなるでしょう。湯気が水蒸気に変わって入り込む隙間をなくすと言うことです。 風呂を沸かしてシャワーで湯を撒けば,浴室は湯気で満タンになります。この前後で沸騰実験を実施すると,モウモウと出ていた湯気(ビフォー)が水蒸気になることなく上まで湯気のまま吹き出す様子(アフター)が観察できるはずです。 吹き出した湯気は小さな小さな水の粒なので,1粒1粒がすぐに蒸発して,空気中の隙間に入り込んでいく。という事実が,イメージしやすくなるのではないでしょうか。 湿度を99%まで高めました。周りは風呂の湯の湯気で満たされています。結果的に,湯気が比較的高い位置まで吹き上がる様子が見えました。 しかし意外なことに,この状態でも湯気は消えていきます。なぜ?どうして?WHY? 湯気は水蒸気になったのではなく,小さな小さな水の粒のまま,上の方で拡散して密度が低くなるので,目に見えなくなっているのではないでしょうか。 以上のような実験をしたことは,これまでありませんでした。教科書でも触れていないのは,説明するのが難しいからでしょう。 でも,児童の疑問に寄り添って,理解の程度に合わせたサポートをしてあげたいと思ったのです。 これらの実践で,児童の疑問をすべて解消することはできませんでしたが,少しでも参考になれば幸いだと思っています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
物理 物質の状態 探究心 943
冬
室内;
室内
普通
少し危険
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