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アゲハの幼虫が蛹になる(蛹化する)ときに見られる驚きの行動 4連発!

  • アゲハの幼虫が蛹になる(蛹化する)ときに見られる驚きの行動 4連発!

材料

チョウの終齢幼虫 飼育ケース 双眼実体顕微鏡

内容

・アゲハの幼虫が蛹になる際の,驚きの行動などを知る。
・アゲハの幼虫を飼育し,前蛹・蛹になる様子を観察する。
・感動的な行動や器官の様子を目にすることができる。

詳細

蝶の蛹には,2つのタイプがあります。2本の糸で体を支える「帯蛹型」と,逆さにぶら下がる「垂蛹型」です。 クロアゲハの蛹は「帯蛹型」で,オオムラサキの蛹は「垂蛹型」です。 20年ほど前,アゲハの幼虫が蛹になる(蛹化する)様子を観察していて,感動したことがあります。「そこまでするの!?そんなことしてたの!?」という終齢幼虫の頑張りと,蛹に装備?された驚きの器官についてレポートします。 終齢幼虫は,糸座に腹部先端を固定した後で,口から吐いた糸で,体を支える帯糸を紡ぎます。 何度も何度も体をそり返しながら糸を吐き重ね,帯糸を釣り糸のように太くて丈夫なものに仕上げていきます。その作業に約15分もかけます。この念入りな帯糸づくりが,私の感動ポイント①です。 「帯蛹型」の蛹は,2本の糸で体を支えているように見えます。しかし,実際は1本の糸で「輪」を作り,そこに体を潜り込ませているのです。体を潜り込ませるためにも,「輪」は大きめに作ります。この大きさ加減も,しっかりインプットされているのですね。 やがて帯糸が完成すると,頭部から,器用に輪の中に体を潜り込ませます。この様子が,感動ポイント②です。 その後で,最大の感動ポイントを目にすることになります。それは,下半身を固定して,上半身を渾身の力で,何度も何度も後ろに反らすのです。「そんなにしたら,糸が切れちゃう!外れちゃう!」と,思わず声かけしたくなるほどの力の入れようです。 ここが感動ポイント③!自分が作り上げた帯糸の強度を,これでもかというほど厳しく確かめているのです。 「そこまでするんだ・・・」と,真剣な確認作業に,感動させられました。 ここまで約20分ほどかかっています。 20年ほど前に見たときは,その行動に音で気づいたのです。静かな部屋に「ビ〜〜ンッ,ビ〜〜ンッ」と,大きな音が響き渡っていました。何事かと飼育ケースを覗き込んで,幼虫の帯糸強度確認作業を目にしたのです。この作業を大きめの飼育ケースの端の方でしていたので,強く帯糸を引っ張る音がケースを振動させ,音が増幅されていたようです。 それ以来,この様子を動画に撮ろうと狙っていたのですが,ようやく実現しました。あの大きな音が記録できなかったのは心残りですが。 この前蛹になる様子を記録した動画を見た方が,いつかそんな感動的な場面に出会えることを願っています。 その1〜2日後,前蛹から最後の脱皮をして蛹になります。蛹化します。 胸部・頭部から脱皮していきますが,体にめり込んだ?帯糸は,どのようにしてクリアするのでしょう。 心配ご無用。帯糸は体の節に回し込んでいるだけだったで,皮は簡単に脱ぎ落とされていきました。 最終的に,皮は全部脱ぎ落とされます。しかし,腹部先端は,最初に糸座に固定されています。ですから一旦腹部先端を外すと,体がダランと帯糸でぶら下がってしまいそうです。 腹部先端をうまく脱着して脱皮するために,知る人ぞ知る「特別な器官」が装備されています。蛹の腹部先端部分は,マジックテープのような構造になっているのです。 双眼実体顕微鏡の20倍で見ると,蛹の腹部先端には,ビッシリと鉤状のフック(鉤状突起)が生えていることが分かります。この形状を初めて見たとき,あまりの違和感に目を疑いました。 40倍で見ると,ここだけ別物!?と思われるような違和感しかない鉤爪にびっくりです。 糸座は,1本の糸をループのように何重にも吐き重ねてあります。フックをそれに絡めることで,比較的簡単に腹部先端を固定することができるのです。 下まで皮を脱ぎ下ろしたら,腹部先端を抜き出します。このとき,頭部と帯糸部分で上半身?を固定し,腹部先端をクニッと曲げて糸座の糸に鉤爪を絡めます。このようにして鉤状突起を脱着するので,体がずり落ちることなく,皮をうまく脱ぎ落とすことができるのです。これが感動ポイント④です。 その後も腹節が縮んだり,翅になる部分が大きく変化したりします。約40分ほどかけて,最終形態に落ち着きました。 このように,蝶の蛹化はミラクル満載です! 子ども達には是非,チョウが蛹になる際に見られるこれらの自然の妙を,自分の目で確かめてほしいと願っています。

基本情報

分野 分野2 育てたいもの 管理番号 季節 場所 難易度 危険度
生物 生態 探究心 945
夏
室内;
室内
普通
普通
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